教養のある所をお見せし(以下略)

 最近ちょっと↑こういう気分なので、今回は頭の良さそうな話を。でもバカです。



 ここ2ヶ月ほど「ブクオフで105円で売ってる名前だけ知ってたり名前すら知らなかったりする人の推理小説を買ってきて、読んだ後『ああ、やっぱり面白くなかったなあ。』と思ってゴミ箱に叩き込むという非常に腹黒い遊び」をしておりました。
 これがまた、読んでる間よりもゴミ箱に叩き込む瞬間の方が100倍楽しい率が5割を超えるという、実に素晴らしい事になってたんですけど、ある日105円で10冊ほど買ってきた中に松本清張の短編集が混じっておりまして、これがなかなか面白かったんで、今日はその話です。


 世間的な評価はともかく、私の中に

松本清張=火サスとかでやってる政界財界裏事情ネタ(しかも微妙に古い)しか取り柄がないクソ面白くないドラマの原作者」

というイメージがあったのと、大昔に読んだ『点と線』のトリックと言うか設定が、もの凄くしょぼくれていた(凄いうろ覚えですが、『東京駅の○番ホームと○番ホームの間は1日5分しか見渡せないのを利用したトリック』と言うからどれだけホームの間が離れているんだ、と思ったら、3番くらいしか離れていなかったのに凄くがっかりした覚えがある)のとで、名前は知っていても全然読んだ事が無い作家だったんですけど、いや、マジ面白かったです。


 1冊読んだだけで語るのも微妙にアレな気がしますが、この人の作品は、犯罪者とか被害者とか刑事が、滅茶苦茶庶民臭いと言うか、小物臭がすると言うか、とにかく設定とか内面が地味なんですよね。
 でも、その地味さをもの凄く面白く書いていると言うか、「あーなんだか分かるよなーその小物臭い心理」と思わせる力が凄い感じで、実に面白い。
 たとえば今回読んだ短編集の中に、「しょぼくれたおっさんが、自分と愛人の間に生まれた3人の子供が邪魔になって1人ずつ殺していく」という、とても異常な設定の話があるんですけど、そんな異常な状況にも関わらず、殺人犯のおっさんのしょぼくれ具合、小物具合、どこにでもいるおっさん具合、でもそんなしょぼくれた普通のおっさんが3人の子供を殺そうとするまでに至るまでの追い詰められ具合、どれを取っても、もの凄い説得力がある。


 松本清張を甘く見過ぎていたと死ぬほど反省しました。




 ただ、一つ言い訳をさせてもらうと、実際読んでみて、この人原作の2時間ドラマがちっとも面白くない理由も凄く分かった様な気がするんですよね。

 この人の「しょぼくれた人等のしょぼくれ具合をめっちゃリアルに説得力を持って書く所」は確かに小説としては凄い長所な訳ですけど、逆に言えば、話の流れが微妙に地味な上に登場人物の設定がしょぼくれすぎていて、設定だけではちっとも面白くない訳で。 
 なので、そりゃあ火サス程度の意気込み(暴言)で骨組みだけ持ってきてドラマ化したら、「政界財界裏事情ネタ以外は特に面白くもない、地味でつまらないドラマ」にもなるわって話ですよ。



 とまあ、何が言いたいかというと「いつもいつも頭が悪い話ばっかり書いてるけど、松本清張も読む(今回が初めてだけど)程度には教養があ(以下略)」という話でした(笑)。