ちなみに私は、列伝スレ見るまで『空手バカ一代』は実話だと本気で信じていた馬鹿です

 私、最近までずーーーっと『プロレススーパースター列伝』台詞改変ネタは、JOJOやらDBやら最近だとシグルイやら例のホモ漫画(あんまり好きじゃないので名前出したくない(笑))やらと同レベルのオタの基礎教養だと思いこんでいたので、全く説明も無しに「やったあ!処女厨の男の急所をモロに!」「優雅に陽気にパンチラ規制を守りながら、もの凄いハレンチ展開をやってのけるのがたまらねえ舞乙の魅力!」などのネタを使ってきた訳なんですけど、つい先日、とりあえずリアル知り合いは誰一人として列伝を読んでなかったことが判明しまして。


 でもって、ちょいと調べてみたら、列伝自体梶原一騎作品の中では相当知名度が低い方で隠れた名作」という記述をかなり見かけまして。


 なので、今回は、今更『プロレススーパースター列伝』という漫画とは何か?について語りたいと思います。




 『プロレススーパースター列伝』は、80年代に少年サンデーに連載されていた、原作:梶原一騎、画:原田久仁信の、実在の「プロレススーパースター」の「列伝」、すなわち伝記……という形を取ってはいますが、内容の8割はカジ・センセの捏造魂の真実で出来ているというベリー・クレイジー(素晴らしく頭がおかしい)な漫画でございます。


 そのくせ毎回、「アントニオ猪木(談)」と称して、カジ・センセが猪木に無断で捏造したアントニオ猪木の談話が挿入されるという作り。
 (正確には、1回だけ、アントニオ猪木が骨折で入院したのでアントニオ猪木(談)が取れなかったという事になっている回があります)


 さらにこの漫画、内容以前の暗黒部分も満載。
 最近の言葉狩り、「ざまあみろ、うすのろニグロめ!」「俺は世界チャンピオンに絶対なれねえッ、この肌の色が黒いという理由だけでな!」等の表現が、後に復刻された潮出版版・講談社漫画文庫版では「ざまあみろ、黒人レスラーめ!」「俺は世界チャンピオンに絶対なれねえッ、なぜかはもう、みんなが分かっているはずだ!」に改悪されていたり(詳細は列伝スレまとめサイト差し替えセリフ集参照)、さらに連載自体がカジ・センセがアントニオ猪木を恐喝した容疑でタイーホされた事によって打ち切られたり、という素晴らしい暗黒ぶり。



 それだけではありません。
 内容自体も、カジ・センセ一流の素晴らしい表現の連打。
 悲鳴は「ホゲェー」笑いは「グフフッ」(悪玉)「ウフフッ」(善玉)

「ベリー・ストロング(素晴らしく強い)レスラー」


「カモン(きなっ)」


「ワン・モア(おかわり)」


「シャラ──ップ(だまれ)!!ゲラーウト(出て行け)!!」

などの珍妙なユーモア溢れる英語表現。

「100マンエン持ってくるか、消えな!」


「やったあ!化け物の男の急所をもろに!」「優雅に陽気にニコニコしながらもの凄ぇ反則やってのけるのが、たまらねぇローデスの魅力!」


「世に悪役の数は多いが、シンとブッチャー、この二名だけは商売用の悪役ではなく、心底人間を呪っている悪魔だ!!」


「まあ、火の酒テキーラをどうぞ。」


「キル・ザ・ジャップ、キル・ザ・ジャップ(日本人を殺せ)!!」「キル・ザ・ジャップ」「(あんなオバーチャンまで!!)」


「つらだけチトばかりハンサムなチビで短足のニセ悪役が、かわいそうにご臨終ッ、ご臨終ッ!!」

 などの、見ただけで思わず台詞改変ネタにしたくなる名台詞の嵐。
 プロレススーパースター列伝スレが、ほぼ台詞改変ネタだけで12スレも続いているのも頷けるというものです。




 だがしかし、列伝の真の魅力はこんな事ではありません。
 恐ろしいのは、内容・それ以前の事情にこれだけの暗黒を抱えているのにもかかわらず、少年漫画として、スーパースターの列伝としてビバ(素晴らしい)な事!!

台詞を抜き出すだけでも

「ど……どこまでもビジネスに徹した奴だ! 俺は奴を憎む一方で好きになっていくかもしれねえ……。」


「俺は忘れねえッ!ファンが愛してくれるのは強いブッチャー、悪役でも一生懸命なブッチャーだって事を!!」


「彼(不死身仮面アズテカ)はリングでは悪役王でも……私生活では素晴らしいアミーゴ(友)だった!」

と感動出来る物が満載なのですが、この作品の素晴らしさを伝えるために、誰もがこの漫画最高の名シーンだと認めるシーンを一つ引用させていただきたいと思います。

日本プロレスのダラ幹(だらけた幹部)を追放しようとして、逆に追放されたアントニオ猪木新日本プロレスを設立。
 師匠にあたるカール・ゴッチに日本に呼ぶ外人選手の交渉を頼んで、その結果の電話が来たシーン)


「ハロー、ゴッチさん! で、どんな顔ぶれの大物レスラーをよこしてくれますか?」


「それが……。」
「いいかイノキ、冷静に聞けよ。」
「誰一人、君の新日本プロレスに参加するのをオーケーしない。」


「!?」


「テレビ中継もない新団体では不安だ。」
「それに新日本プロレスにあがったら最後、もう二度と日本プロレスによんでもらえんと言う。」


「ウ〜〜〜ヌ。」
日本プロレスのワル幹部共がアメリカのレスラー達に手を回し、圧力をかけたな!」


「どうやら、そのようだが感情的になったら負けだぞ、イノキ。」
新日本プロレスの旗揚げ興行は立派にやれるッ!一人の超大物レスラーが日本へ行き、君と戦うからな!」


「エッ……。そ、その、超大物とは!?」


「私だよ。」
「それとも、カール・ゴッチは超大物ではないかな?」


「ゴ……ゴッチさん!」

 「これを読んで泣けなければ人にあらず」と言われた諸葛孔明の出師の表にも匹敵する名シーンです。
 まあ、全部カジ・センセの捏……魂の真実ですが。




 かように素晴らしい『プロレススーパースター列伝』ですが、残念な事に「内容がほとんどデタラメなんだから名作とは言えない。」という声も聞かれます。
 それに対する反論として、私は列伝スレの偉大なる先人のこの台詞改変ネタを引用して、この文章を終わらせたいと思います。

 プロレスには事実だけではなく、夢・ロマンも必要であり、我らがカジ・センセ・原田センセの『プロレススーパースター列伝』も、事実プラス、カジ・センセの魂の真実を発散する!!
 アントニオ名無し(談)